いなりおびしゃ

「いなりおびしゃ」とは初午の日に、福と鬼の文字が書かれた2つの的に矢を放って農作物の豊凶を占い福を祈る神事のことだ。今日“初午”といえば、年中で最も寒い時季に当るが、古くは旧暦を用いていたので、春めいた頃(通常は2月下旬から3月中旬の間)に巡ってきた。初午は農作物の豊作祈願が原型だが、四季のうつろいを敏感にとらえた当時の人々は、初午には老いも若きも、男も女もめかしこんで稲荷詣をした。 水稲荷神社は今もって旧暦で初午祭を行っている数少ない神社の一つで旧暦2月の初午の日に、「いなり おびしゃ」を行っている。

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水稲荷神社初午の装い
神前に勢揃いした射手たち
的を射る前に問答を済ませてから
 
いなりおびしゃ参観記  初午といえば東京では新暦2月の寒い最中の行事となっているが、今もって旧暦で初午行事を行っていることに興味を覚え水稲荷神社の「いなりおびしゃ」を見学に行った。前夜から暴風雨警報が出て千葉では風速30mを超えるような天候となり、当日の午前中、諸交通機関が運行休止となる生憎の天気となった。ラッキーとしか言いようが無いのだが、午後になると雨が止み風もおさまって来たので神社に出かけてみた。境内周りは大きな木に囲まれ、これが風除けとなっているのか、風も殆ど無く、拝殿周りに立てられている沢山の赤いいなり幟旗が時々はためいている程度だった。拝殿手前左側広場には既に「おびしゃ」の準備が出来ていて「鬼」と「福」の的が据えられている。的に向かって左側には射手控え席のテントが、右側には司会進行係りと問答役のテントが張られていて開会を待っている。午後3時前、一同が入場し拝殿前に勢揃い、そしておびしゃが始まるのだが、先ず、頭屋からで、あと氏子役員が次々に登場する。各人は名前を呼ばれると問答役と問答をする。「氏は?」「姓は?」「名は?」という問いに答える簡単な問答だ。
 
 
おびしゃは先ず頭屋から  頭屋とは初午に際し、里内の一家を選んで神を祀り、昔は1日神主として禊祓を修めた人望のある幸い豊かな家だ。
 
役員達が的を射る  鬼の的を「エイ!」と狙い、次いで福の的を
「オウ!」という掛け声で射る。
 

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的を射る  射手は射場に立ち、「エイ!」という掛け声とともに「鬼の的」を狙い、次いで「オウ!」の掛け声で「福の的」を射るのだ。距離は30m位か、中には失敗する人もいたが殆どの人は正確に的を当て「今年の豊作間違い無し」と拍手を貰っている。全員が終了し司会が飛び入りの案内をすると、小学校低学年の少女が応募して矢を射たがなかなかうまく行かないようだ。ご褒美に縁起物の鏑矢を貰っていた。最後に宮司の挨拶がありいなりおびしゃの行事は終わったが、早稲田という言わば東京の街の真ん中で、こんな伝統行事がひそやかに続けられていることに深く感銘を受けた。
 
いなりおびしゃ  初午は2月最初の午の日で、稲荷社の本社である京都伏見稲荷神社の神が降りた日が和銅4年のこの日であったとされ、それにその年の豊作祈願が原型となり稲荷信仰が結びついたものだ。この日行われる、農作物の豊凶を占い福を祈る「おびしゃ」は〔御歩射〕と書き〔馬に乗らず弓を射る事〕で、古代から稲作、狩等の吉凶を占う為に弓矢を以って的を射て神占としていた。稲荷の神は冬は山に鎮まり春先初午の頃、田を守りに里に降り秋収穫が終わると山に帰ると信じられていた。
 
初午  午の方角は南を示し、午をもって午前・午後とわけられているように午の時刻(午前11時から午後1時)は真昼の一番運気の高い時であり、特に立春を迎える2月最初の午の日をもって運気最高の日と仰ぎ、 初午詣りを行い、この日に稲荷十徳を受けるために参詣する。今では2月最初の午の日とされるが、古来は、立春以降の最初の午の日に行われていた。2月の2回目の午の日を二の午、3回目を三の午と言い、これらの日にも祭礼を行う地方や、二の午もしくは三の午にのみ祭礼を行う地方もある。また、この日を蚕や牛・馬の祭日とする風習もある。
 
水稲荷神社  祭神は倉稲魂大神(伊勢神宮の神様と同じ神様)佐田彦大神、(道路を守る神様)大宮姫大神(住居を守る神様)天慶4年(941年)、鎮守府将軍 俵藤太秀郷朝臣が旧社地(現早稲田大学9号館)の『富塚』の上に、稲荷大神を勧請し、富塚稲荷、将軍稲荷と呼ばれていた。元禄15年(1702年)大椋の下に霊水が湧き出し、眼病に効く、信仰すると火難を免れると江戸中に評判になり、この時から「水稲荷」と称するようになったという。昭和38年早稲田大学と土地交換により、現在地に移ったが現在地は清水徳川家の旧跡で、名園「甘泉園」の一部という。境内の富士塚は、江戸市中最古という高田冨士を旧社地から移築・復元したものだ。
 
稲荷神と狐  稲荷神社の主祭神「倉稲魂神(うかのみたまのかみ)は食物の神であるところから「御饌神(みけつかみ)とも称される。この「うか」は伊勢外宮の祭神豊受大神の「うけ」と同一語源で同一神だ。御饌神(みけつかみ)は万葉仮名では三狐神とも書くのでこの狐の字に因んでキツネが稲荷大神の御使になったと言われている。
 
 
 
旧暦2月の初午の日   水稲荷神社(℡03-3200-4621
新宿区西早稲田3-5-43(地下鉄東西線・早稲田、高田馬場→早大正門行きバス「西早稲田」)

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