伊奈澤天神社祭礼

25日は菅原道真を祀る天神社の縁日だが1月は初天神として各天神社では色々な行事が催され大勢の人々が参詣する。伊奈沢天神社の祭礼は、この初縁日が天神講によって、かって盛大に祝われたのがそもそもの始まりと言われ、湯の花神事のほか、神楽や奉納太鼓、或は氏子女性達による奉納演芸が行われ夕方まで賑わう。名物になっているのは、その年の干支が描かれた「まめ太鼓」が売り出されることだ。昔は子供達が年末に作り元旦の朝初詣の時に「マメで暮らす豆太鼓」と声をかけて売ったというが、今では地元の青年会・青羽会が作り、この日伊奈沢天神の祭礼に売り出している。

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伊奈沢天神社  西多摩には珍しい天神社で祭神は菅原道真。江戸前期と推定されてる「木造菅公坐像」をご神体として安置している。明治15年の大火「大久野焼け」で、神社の歴史を知る手掛かりは焼失し不明な点が多い。神社の現所在地名は「伊奈沢」でないのに、この名が付いた理由は羽生からあきる野市伊奈に通じる沢筋にあった天神様が現在地に移転したためだろうと総代会越沼敬氏は言われている。移転の理由は不明だが「風土記縞」に「古くは村の南、穴沢という所にあったが人が馬に乗って通るとしばしばら落馬するので現在の地に移した」という記事があり、これと符合するのかも知れない。稲城市の式内社「穴澤天神社」、あきる野市(旧五日市町)の深沢にも「穴澤天神社」があるので、稲城の「穴澤天神社」から分社されたのかもしれない。合格率の高い天神様として近辺の受験生に人気があるという。
 
編集記  「よみうりグッドデイ」に伊奈沢天神社祭礼の小さな紹介があり、この中にその年の干支を描いた手作りの「豆太鼓」が売り出されるという記事が郷土玩具に興味を持つ筆者の目を引いた。早速、インターネトで調べてみたが豆太鼓は勿論、伊奈沢天神社祭礼の関連資料が全く見つからないので、やむを得ず、日の出町役場に電話したところ教育委員会・佐伯秀人様より色々な資料や情報を頂戴してこのページを完成することが出来た。佐伯様に厚く御礼申し上げたい。
 
豆太鼓の歴史  もともとは新しい年への縁起物として小学生によって作り売られたものだ。篭屋(竹細工店)から使えない部分を貰い、川水に浸し、丸くして糸で縛り軍道紙を張り、ミョウバンに膠を溶かしたものを塗る。大豆を1日程度水に浸して赤糸を通して竹で丸めた中央に当る長さで切り、円周面に取り付け、太鼓の両面には胡粉で幸福とか成金とか健康などの文字を書き入れ、その先には日の丸の旗とか篠で編んだ風車等をつける。これを「ベンケイ」という藁を棒に束ねてつけたものにさして、元旦の早朝、氏神様に初詣する人に「豆で暮らす豆太鼓」と叫びながら売った。時により年末の休みを利用して遠く青梅のほうまでベンケイを担いで売りに行きよく売れたものだ。これを作るためには学校の登校時に申し合わせて家に用事があるとか風邪気味とか先生に申し出て早退して作ったものである。この利益金は天神講の財源になったり戦時中は国防献金等にもしたこともある。
 
湯の花神事  拝殿内の式典が終わると10時半頃より湯の花神事が行なわれる。四方を竹で支えられ注連縄を巡らせた斎場に釜が据えられている。神官は先ず竹笹が供えられている仮祭壇に祈りを捧げ、釜を中心に東西南北に回りながら祈祷する。次いで御幣のついた棒で湯をかき回し再び四方を巡る。最後に竹笹を湯に浸し、これを拝殿前に運び、再び戻って湯に浸して再度神前に供える。これで湯の花神事は終わるのだが、この手順は省略の無い昔ながらのほぼ完全なものなのだろう。他では見たことが無いものだ。ただ、ここでは竹笹を振って氏子に湯の花を振りかけることはしない。無病息災とともにその年の豊作を祈願する神事だ。この地区では以前、養蚕が盛んで「お蚕様」と呼ばれた蚕のために行われたという。この神事、古くは盟神探湯(くがだち)といって熱湯を探り正邪を神前に証した古代中国の神明裁判から起ったといわれる。
 

 

 
 
伊奈沢天神社祭礼式典  バスを降りると神社までは1本道で両側は梅林、行き交う車も殆ど無く、北側に迫る山が防風の役をするのか穏やかな絶好の祭り日和だ。同じ東京で何という恵まれた環境だろうか。神社に近づくと子供絵を描いた手製の行灯が並んでいる。境内では忙しく立ち働く人、テントの中でおでんなどの販売準備に追われる人、焚火を囲んで談笑する人、さまざまだが殆どが氏子ないし周辺住民と見受けられる人ばかりだ。午前10時過ぎ、氏子総代会の皆さんが、右側に沢山の豆太鼓が並んだ拝殿に昇殿し、祝詞奏上、お祓い、玉串奉奠など祭儀が進められて行く。珍しく感じたのは「君が代」の斉唱だ。今まで300余りの祭りに参加しているが国歌を聴いたのは初めてで戦前育ちには懐かしい限りだ。
 

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総代会の人たちが昇殿して儀式が行われる
豆太鼓をお祓いする
 
 
 
仮祭壇に供えられた竹笹と棒
竹笹を湯に浸す
竹笹を神前に供える 
 
 
 
豆太鼓の表 
豆太鼓の裏には干支のねずみの絵
豆太鼓を選ぶ
 
伊奈沢天神の豆太鼓 例祭式典の間中、拝殿右横に置かれてお祓いを受けた豆太鼓は、神事が終わると境内のテント横に運び出され参拝客に売られる。大きいものは直径30㌢、中が20㌢、小が10㌢くらいで大と中は殆ど予約済みだ。豆太鼓の上は風車になっていて良く廻り、赤地の表には「初天神」「招福」「家内安全」「夫婦円満」などの縁起言葉が書かれ、裏には今年の干支のねずみが描かれていて、棒を廻すと良い音が出る。昔は小学生の子供達が作ったそうだが、今は地元の青羽会(青年会)が作り、売り上げは青羽会の運営資金に当てているそうだ。1本売れるたびに威勢の良い手締めが行われる。
 
 
 
大忙し、青羽会・羽生英昭さん 
日野はやし連の応援奉納
 
編集後記  「よみうりグッドデイ」に伊奈沢天神社祭礼の小さな紹介があり、この中にその年の干支を描いた手作りの「豆太鼓」が売り出されるという記事が、郷土玩具に興味を持つ筆者の目を引いた。早速、インターネトで調べてみたが豆太鼓は勿論、伊奈沢天神社、その祭礼に関する資料が全く見つからない。日の出町役場に電話したところ教育委員会・佐伯秀人様より色々な資料や情報を頂戴しまた、地元青羽会・羽生英昭様、総代会・越沼啓様にご紹介頂いてこのページを完成することが出来た。豆太鼓は期待した通りだったが、その上このように滅多に見ることが出来ない心温まる素朴な祭りに無上の喜びを感じた。佐伯様はじめ皆様に厚く御礼申し上げます。
 
1月25日に近い日曜日 伊奈澤天神社(℡042-597-0511町商工観光係)
     日の出町羽生大久野1386(JR五日市線、五日市→つるつる温泉行きバス・大久野中学校前)

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